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第3回 アジア諸国等のIFRS適用とコンバージェンスの動向

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1 はじめに

前回までにご紹介しましたように,米国の証券取引委員会(SEC)が,国外のSEC登録企業に国際財務報告基準(IFRS)の適用を,2009年から認める方向で本格的に検討を開始しました。

一方,EUでは,「IAS の適用に関する規則」(2002年7月19日採択)第4条により,2005年からEU上場企業の連結財務諸表についてIFRSが適用されています。同第5条(a)は,上場企業の個別財務諸表,第5条(b)は非上場企業の個別財務諸表,連結財務諸表をそれぞれ取扱っており,IFRSの適用の可否は加盟国に委ねられています。英国のように,非上場企業の連結財務諸表,個別財務諸表にIFRSの適用を許容する国や,フランスのように非上場企業の個別財務諸表の作成にはIFRSの適用を許容しない国もあります。

このように2005年以降,米国,欧州ではIFRSへの取組みに大きな変化がありました。そこで今回は,中国(本土),韓国,インド,インドネシア,フィリピン,シンガポール,タイ,香港,ベトナム,マレーシアなどの日本とも経済的な関係が密接なアジア諸国のIFRSの適用,そしてコンバージェンスへの動向についてご紹介していきたいと思います。

2 IFRSの適用状況

上記の国々のIFRS適用状況をみてみますと,現時点では,EUのように上場企業にIFRSを強制適用している例はみられません。しかしながら,韓国政府及び韓国会計基準審議会(KASB)が2007年3月に,IFRSへの移行についてのロードマップを公表したことは注目されます。韓国では,2009年1月1日以降,金融機関を除く全ての企業に,IFRSを任意適用することを認め,2011年1月1日以降,上場金融機関を含む全ての上場企業にIFRSを強制適用する予定としています。非上場企業にはIFRSの強制適用はないので,これらの企業のための単純化された会計基準を2009年末までに公表することになっています。このように上場企業についてIFRSに全面的に移行するのは,前回までにご紹介した,SECが2009年に予定しているUSGAAP/IFRSの調整表の撤廃の利益を受けることなどを目的としています。すなわち,IFRSを適用することにより,2009年以降米国・欧州の証券市場への上場へのアクセスが容易になります。

また,2007年7月,インドでも2011年に上場企業等にIFRSの適用を強制することが決定されています。

さらに,香港では,現在,香港証券取引所は上場企業にIFRSの使用を許容していますが,香港設立の上場企業については,香港会社法令の規則に従わなければならないとされています。また,一般的にはIFRSを適用することを希望する企業は,香港会社法令への準拠性について確認するため法的アドバイスを求めることが必要とされています。

シンガポールも,上場企業にIFRSの適用を許容していますが,①シンガポールで設立された上場企業が,IFRSの適用を強制する他国の証券市場にも上場している場合,②シンガポール上場企業が,IFRSの適用を強制する国で設立されている場合,③企業規制当局(ACRA)が,シンガポールにおいてのみ上場しているシンガポールで設立された企業に,許可を与えている場合にのみ,IFRSの適用が許容されます。

3 コンバージェンスへの取り組み

一方,IFRSについて,一部の修正をほどこし自国の基準としている例も多くみられるようになりました。

例えば,マレーシアは,特定の基準書を除き,IFRSの基準書を国内基準として公表しています。香港の国内基準は,IFRSの経過規定を除き,そのままIFRSを取込んでいるといわれています。またシンガポールやフィリピンの国内基準は,IFRSの特定の基準書や基準書の一部を除外して,ほぼIFRSを取込んでいるといわれています。さらに詳細な分析が必要ですが,このような場合は,実質的にはIFRSを適用していると考えてもいい場合もあるかとも考えられますが,IFRSと経過規定などが異なりますのでその点について留意が必要とされます(注)。

(注)シンガポールの国内基準は,特定の認識,測定を除き,IFRSを取込んでいたが,最も重要な相違であった投資不動産についての差異も,2007年に解消されコンバージェンスが進んでいる。また,フィリピンについては,従業員給付などについていくつか差異があるが,これらを除外して自国基準への取込みを行っている。なお非上場企業についてはIFRSにコンバージェンスが進んだ基準の適用は免除されており,IASBが公表を予定している中小規模企業の会計基準を適用する予定である。

さらに,中国(本土)の動向も注目されます。中国では,2007年1月1日からIFRSとのコンバージェンスが進んだ中国会計基準(CAS)が,約1,300社の上場企業に適用されることになっています。IFRSとのコンバージェンスが進んだCASは,従来のCASとは大きく異なるため,2007年からの適用に当たり,企業結合や,金融商品及び株式報酬などの分野での公正価値評価,貸出金の減損,詳細な開示,オプションや金融保証などのオフバランス取引が新基準適用の実務上の最大の課題となっているといわれています。なお,現時点では,中国は,IFRSを自国の基準とするのではなく,CASのコンバージェンスを今後も推進していく予定とされています。

上記以外のインドネシア,タイ,台湾,ベトナムは,現状のところ自国の基準を適用しています。しかし,インドネシアでも2011年からのIFRSの完全適用について検討が開始されています。台湾については,IFRSへのコンバージェンスについてタイムテーブルは現在のところ公表されていませんが,台湾の会計基準設定主体はIFRSにコンバージェンスするような新基準の設定,あるいは既存の会計基準の改訂を行っています。また,ベトナムも,明確な期日は示されておりませんが,徐々にIFRSを取り入れており,現在はIAS32号「金融商品:表示」,IAS39号「金融商品:認識と測定」の導入についての議論が進められています。

4 おわりに

中国(本土),韓国及び東南アジア等の国々では,IFRS適用については足並みがそろっているわけではなく,コンバージェンスへの対応も国毎に様々です。しかし,特に2005年のEUにおけるIFRS導入以降,アジアの国々でもIFRSへの関心が高まり,IFRSをほぼそのまま自国の基準に取込む国々なども増加しつつあります。

なお,EUによる2009年のIFRSとの同等性評価の期限に向けては,様々な動きがあることが予想され,引続きアジア諸国等の動向も注目されます。

参考文献
PricewaterhouseCoopers IFRS News Issue 51 April 2007 and Issue 52 May 2007.

このQ&A は、『週刊経営財務』2847号(2007年12月08日)にあらた監査法人企業会計研究会として掲載したものです。発行所である税務研究会の許可を得て、あらた監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載·転用はご遠慮ください。

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