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第5回 リース取引をめぐる国際的な会計基準の動向

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1 わが国におけるリース取引をめぐる会計基準

本シリーズでは,前回まではわが国を含む国際的な会計基準のコンバージェンスの動きを概観しましたが,今回は個別的なトピックであるリース取引に係る会計基準をめぐる国際的な動向をお話したいと思います。

ご存知のとおり,わが国においては,平成19年3月30日に企業会計基準委員会が企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(以下,「新リース会計基準」)と企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」を公表し,平成20年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度から適用(早期適用も可能)されることとなっています。

この新リース会計基準では,従来わが国において認められていた一定の要件を満たすファイナンス・リース取引を賃貸借取引として処理する例外的会計処理方法(リース取引で利用する資産を貸借対照表に計上しない方法)を廃止し,原則としてすべてのファイナンス・リース取引を売買取引として処理する(リース取引で利用する資産を貸借対照表に計上する方法)ことを求めています。

わが国においては,これまで数多くのファイナンス・リース取引が上記例外的な会計処理方法である賃貸借処理で会計処理されており,リース取引で利用する固定資産が企業の貸借対照表に計上されていないという実態がありましたが,新リース会計基準の下ではリース取引がファイナンス・リース取引として判定されればこうした賃貸借処理は選択できず,すべて貸借対照表に計上されることになります。

2 リース取引をめぐる現行の国際財務報告基準および米国会計基準に対する批判

一方,国際財務報告基準および米国会計基準では,わが国でいうところのファイナンス・リース取引を賃貸借取引として処理する方法は従来から認められておらず,リース取引がファイナンス・リース取引と判定されればすべて売買処理することが求められています。したがって,わが国における新リース会計基準の適用後は,これらの国際的な会計基準との間の会計基準間の差異はこの点(すべてのファイナンス・リース取引を売買取引として処理する点)においては解消されるということができます。

しかし,このようにわが国会計基準との間の代表的な差異が解消する一方で,国際財務報告基準におけるリース取引を規定した国際会計基準第17号(以下,IAS 17)と,米国におけるリース取引の会計処理を規定した財務会計基準書第13号(以下,FAS 13)に対しては,様々な批判が寄せられています。一例として,数カ国の会計基準設定主体等が参加する研究グループであったいわゆるG4+1(米国,英国,カナダ,オーストラリア・ニュージーランドの会計基準設定機関および国際会計基準委員会で構成。2001年に国際会計基準審議会(IASB)の活動開始を受けて解散。)が1996年および2000年に公表した報告書を挙げることができます。

当該報告書では,現行のIAS 17 およびFAS 13 は,すべてのリース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の2種類に区分し,前者を売買処理,後者を賃貸借処理をすることを求めているが,この区分が場合によっては主観的なものとなり,また,賃貸借処理した場合には借手の財務諸表に資産を利用している実態が反映されず,したがって有用な情報を提供しないとしています。

また,米国証券取引委員会も,サーベンス・オクスリー法の要請を受けて行ったオフ・バランス・シート取引に関する調査報告書を2005年に公表しましたが,その報告書でも,リース取引は米国財務会計基準審議会(FASB)が検討すべき優先的な課題であるとして挙げ,特に,FAS 13における2者択一的な会計基準は財務情報の透明性を阻害する要因であり,会計基準が2者択一的であるがゆえに会計上のオフ・バランスを目的として設計されたリース取引が行われていると指摘しています。

3 IASBとFASBのリース会計再検討共同プロジェクト

このような批判を受けて,IASBとFASBは2006年7月,共同でリース会計を根本から再検討するプロジェクトを発足しました。検討の方向としては,リース取引を2種類に区分する従来の会計モデルに変えて,「使用権モデル」(The Right-of-Use Model)の適用を検討しています。

この使用権モデルの基礎をなしているリース取引の考え方は,

  • 1.リース取引の貸手は,リース期間にわたりリース料等の支払いを受ける権利という資産を保有している
  • 2.リース取引の借手は,リース期間にわたりリース資産を使用する権利という資産を保有しており,同時にリース期間にわたりリース料等の支払いをなす義務という負債を有している

というものです。

使用権モデルの会計処理においては,上記の各資産および負債をそれぞれ計上することになりますが,そこには従来の「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」という区分は存在していません。すなわち,使用権モデルにおいては,すべてのリース取引について,貸手と借手はそれぞれ以下のような資産,負債を計上することとなります。

貸手 リース料を受け取る権利を表す資産
リース期間終了時におけるリース資産に対する持分を表す資産
借手 リース資産を使用する権利を表す資産
リース料の支払い義務を表す負債

さらに,現在は各資産,負債をどのような金額で計上するかなどについて様々な選択肢をもとに検討が進められています。たとえば,借手のリース資産使用権を表す資産については,以下の3つの考え方が検討されています。

無形資産アプローチ 無形資産として処理する考え方
リース資産の性質アプローチ 自己所有の有形固定資産と同様の会計方針で処理するアプローチであり,IASBが支持している考え方
別の会計モデルアプローチ リース資産使用権の会計処理方法について新しい会計モデルを構築し,それにしたがい処理するアプローチであり,FASBが支持している考え方

IASBとFASBの共同プロジェクトは2009年の前半に予備的見解を公表する予定で活動が進められている段階ですが,わが国においてファイナンス・リース取引の賃貸借処理が禁止される一方,国際的な会計基準においてはこれまでとは全く異なるリース会計の枠組みが議論されているというのは興味深いことではないでしょうか。

このQ&A は、『週刊経営財務』2864号(2008年4月07日)にあらた監査法人企業会計研究会として掲載したものです。発行所である税務研究会の許可を得て、あらた監査法人がウェブサイトに掲載しているものですので、他への転載·転用はご遠慮ください。

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